土地や建物、車両等の固定資産を取得する際には、物件そのものの代金以外に様々な付随費用が掛かってきます。固定資産取得の会計処理を行うとき、これらの付随費用のうち、どこまでを固定資産の取得価額に含めるべきか迷ってしまいますよね。
税務調査においても しばしば論点に挙げられる固定資産の取得価額。今回は、土地・建物、機械装置、車両等の取得(主に購入による取得)を想定し、付随費用の取り扱いについて整理したいと思います。
目次
|
これらは取得に直接要する費用としてすべて取得価額に算入されます。但し、保険料は非課税仕入、輸入関税は不課税ですので、消費税区分だけは注意が必要です。
仲介業者に支払う仲介手数料は、取得のために直接要した費用とされ、取得価額に含めなければなりません。土地・建物を一括購入した場合は、仲介手数料を土地代金と建物代金で按分して土地勘定及び建物勘定に加算します。仲介手数料は飽くまで課税仕入ですので、土地勘定に加算する部分についても課税仕入として処理する必要があります。
登録免許税、不動産取得税、自動車取得税、新増設に係る事業所税はいずれも取得に要する付随費用ではありますが、流通税としての性格を持つもの、或いは、第三者対抗要件の具備のために支出される費用であることから、取得価額に含めなくても良いとされています。
売買契約書に貼付する収入印紙代(印紙税)も同様です。
また、車両特有の付随費用については後述しますが、自動車税、自動車重量税も保有した後に生じる事後的な費用であるとされ、取得価額に含める必要はありません。
不動産登記のための司法書士報酬や自動車の登録のための届出費用、手続代行費用、ナンバープレート取得費用は取得価額に含めないことができるとされています。
固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日現在の所有者が納税義務者となる税金(市町村民税)であり、期中に所有者が変わった場合でも、負担すべき税額が変わることはありません。すなわち、仮に、1月2日に不動産を取得した場合でも取得者はその年分の納税義務を負いません。
しかし、我が国における不動産取引の商慣習として、年間の固定資産税を売手・買手がそれぞれの所有期間に応じて負担するという暗黙のルールが存在します。そのため、土地・建物の取引価額には必ずと言っていいほど、この固定資産税清算金なるものが上乗せされます。
但し、買手としてはその年分の納税義務は無いわけですから、この清算金は本来の固定資産税ではなく、不動産の取引対価の一部とみなされるのです。よって、固定資産税の清算金は土地・建物それぞれの取得価額に含める必要があります。
一つ、注意しなければならないのは消費税区分です。固定資産税とは名ばかりで、本来は不動産の取得代金を構成するものですので、土地勘定に含めるものは非課税仕入、建物勘定に算入する金額は課税仕入として処理しなければなりませんのでご留意ください。
土地・建物等の取得に際し、現にその建物等に住んでいる人が居る場合など、その使用者に対して立退料を支払うケースがあります。立退料や立ち退きのために要した費用は、当該土地・建物の取得価額に含める必要があります。
土地と建物がセットで売買されるケースでも、建物が相当古い場合などは、買手としては土地のみが欲しく、建物は取得後すぐに取り壊す前提で取引されることがあります。このように、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であると認められる場合は、当該建物の取り壊し時の帳簿価額及び取り壊し費用は当該土地の取得価額に算入する必要があります。
8. 埋立て、地盛り、地ならし、切土、防壁工事その他土地の造成又は改良のために要した費用
これらの費用は原則として土地の取得価額に算入することとされています。但し、防壁、石垣積み等で、その規模・構造から見て土地と区分して構築物として計上することが適当と認められるものについては、土地ではなく、構築物として減価償却することができます。
建築の催事に係る費用は、建物の取得のために要した費用と考えられるため、建物の取得価額に含めることとなります。よって、地鎮祭、上棟式に要した費用は取得価額に算入します。
一方、落成式(竣工式)については、その建物の完成後に行われる式典であることから、事後的な費用として取得価額に含めず、費用計上することができます。建物の完成により操業が開始されたことに伴い支出する記念費用なども同様です。
借入金利息については、その借入れが固定資産の取得のためであっても、一切、取得価額に算入する必要はありません。
割賦販売契約において、購入代価と割賦期間分の利息及び売手側の代金回収のための費用等に相当する金額とが明らかに区分されている場合は、その利息及び費用相当額は取得価額に含めないことができます。
これらは建物の建築に直接要する費用として、すべて建物の取得価額に算入しなければなりません。
但し、建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用は取得価額に含めず、費用計上することができます。
一旦締結した固定資産の取得に係る契約を解除したことにより違約金が発生した場合でも、他の固定資産の取得価額に含める必要は無く、費用計上することができます。
新車でも中古車でも、車両の取得の際には様々な費用が掛かってきます。
- 自動車取得税
- 自動車税/軽自動車税
- 自動車重量税
- 自賠責保険料
- 検査・登録費用(印紙・証紙代)
- 検査登録代行費用
- 車庫証明代行費用
- 車庫証明法定費用(証紙代)
- ナンバープレート代(番号標交付手数料)
- 自動車リサイクル預託金
- 納車時の整備費用
- 納車費用
上記「3. 租税公課」で述べた通り、a. 自動車取得税は流通税的な性格のものであるため費用計上できます(税区分は不課税)。
b. c. d. も車両を保有することで事後的に発生する費用ですので費用計上できます(自動車税/軽自動車税及び重量税は不課税、自賠責保険料は非課税仕入)。
e. ~i. は登録に要する費用であるため、「4. 登記・登録のための費用」で述べた通り費用計上できます(印紙・証紙代は非課税仕入又は不課税、代行費用は課税仕入。ナンバープレート代(番号標交付手数料)は登録車両の場合は非課税仕入ですが、軽自動車の場合は課税仕入となります。)。
j. の自動車リサイクル預託金も車両の取得価額には含めません。リサイクル券(A券)に記載された金額は売却時に券面額で譲渡できますので、固定資産の部に「預託金」等の科目で計上しておきます。但し、預託金とは別に支払う「資金管理料金」(新車購入時 290円・中古車購入時 410円(いずれも消費税込み))は手数料的な性格のものですので費用計上します。
一方、k. 及びl. については、車両の取得に直接要する費用として取得価額に含めます。
上記をまとめると以下の表の通りとなります。
取得価額に含めるべきもの | 取得価額に含めなくてよいもの |
|
|
以上、いかがでしたでしょうか?
税務当局は損金を不当に前倒し計上する行為に目を光らせています。よって、上表の「取得価額に含めなくてよいもの」が仮に取得価額に含まれていたとしても税務当局は何も言いません。なぜなら、その付随費用が土地勘定に計上されずっと損金算入されないか、建物等に計上され減価償却を通じて将来の長期に渡り損金算入されることになるからです。
一方、「取得価額に含めるべきもの」を含めず、損金経理していた場合は税務署は黙っていません。否認され、修正申告を行うこととなります。建物などの減価償却資産であれば、否認額(減価償却超過額)を毎期少しずつ減算認容していく必要もあり、非常に煩雑となります。
税務上問題とならないよう、固定資産の取得価額に含めるべきもの/含めなくてよいものについては、細心の注意を払いたいものですね。