「記帳代行」か「自計化」か。中小企業が税理士と付き合うに当たり、基本的にはどちらかを選択することになります。今回は、双方のメリット・デメリットについて考え、当事務所としてのスタンスをお伝えできればと思います。
「自計化」とは?
まず、「記帳代行」とは、会計事務所に「会計ソフトへの仕訳の入力」や「元帳等の帳簿の作成」を委託することを言います。
一方で、「自計化」(じけいか)とは、「自計」出来るようになる、すなわち、会計事務所に記帳業務を委託するのではなく、自社で会計ソフトに入力するなどして帳簿を付けれられるようにすることを言います。
それぞれに、メリットとデメリットがあり、自社の状況や、会社を今後どうして行きたいかなどの社長の想いによって、正しい選択をする必要があります。
「記帳代行」のメリット・デメリット
「記帳代行」のメリット
- 煩わしい経理業務を会計事務所に丸投げすることで、本業に集中できる
- 経理スタッフを雇うよりも記帳代行報酬を払う方が低コスト
「記帳代行」には、一般的にこのようなメリットがあるとされています。但し、これらは、創業間もない企業や、社長一人の会社の場合にのみ当てはまると考えられます。
一見、中小企業にとってメリットが大きいと思える「記帳代行」は、実は、デメリットの方が大きいと言われているのです。次に、デメリットについて見ていきましょう。
「記帳代行」のデメリット(自社で記帳を行っていないことによる弊害)
❶ 自社の業績がタイムリーに分からない
- 会計事務所から記帳結果が上がってくるのは早くて1か月後
- ましてや、月中のタイミングで、当月の業績がどうなりそうかなど、正確に予測することは不可能
❷ 数字を読めるようにならない
- 1~2か月遅れの試算表などに社長の興味はなく、結果、財務数値を読む習慣が身に付かない
- 感覚のみに頼った経営から脱却できない
❸ それほど手間は減らない
- 売上や給与の台帳作成、領収書の整理、支払処理・・・
- 記帳を丸投げしているのに、自社でやらなければならない業務は意外とある
- 記帳を委託することで実はそれほど時間やコストの削減にはなっていない
上記のうち❶と❷がよく言われる「記帳代行」のデメリットです。自社の業績や財務状況をタイムリーに把握することができないため、適時・適切な経営判断を行うことは難しくなります。
また、「記帳代行」を依頼しているうちは社長の財務数値に対する感度が低いままであるケースが多く、その結果、いつになっても数字を読めるようにならず、真の意味での「経営」「マネジメント」ができないままとなってしまいます。
更には、上記❸のとおり、「記帳代行」を会計事務所に依頼するにも、最低限、領収書を整理したり、売上台帳や給与台帳を作成する必要はあるので、一定の時間は掛かります。実は、自社で会計ソフトに入力する「自計化」と比べて、大した時間やコストの削減にはなっていないという実情があるのです。
「自計化」のメリット・デメリット
では、次に、「自計化」のメリットとデメリットについて見て行きましょう。自社で帳簿を付けられるようになる「自計化」には、以下のようなメリットがあります。上述した「記帳代行」のデメリットの裏返しでもあります。
「自計化」することの主なメリット
❶ “今”の経営状況を把握できる
- 社内で日々記帳が行われているため、現在の業績や財務状況をリアルタイムで把握することができます。
❷ 資金繰りや経営方針の決定がしやすくなる
- 経営の「今」を知ることで、感覚に頼らず、客観的な数字に基づき、適切に将来見通しを付けられるようになります。
- 受発注、設備投資、借入れ、人工(にんく)のやり繰りなどの経営判断をタイムリーに行えます。
❸ 黒字経営への意識が高まり、会社が強くなる
- 自社で帳簿を付けているため、無駄な支出などに気付きやすく、経費削減への取り組みが可能になります。
- 企業経営にとって不可欠な機能である「経理」を自社で回すことで、本当の意味での経営が実行できます。
❹ 税理士をもっと活用できる
- 税理士に記帳・決算・申告だけをやらせるのはもったいない。
- 記帳業務がなくなった税理士には、本来の役割である「経営助言」「ためになるアドバイス」が期待できます。
一方で、「自計化」のデメリットとしては、一般的に次のようなことが言われます。
「自計化」のデメリット
- 自社の経理負担が増えてしまう
- 専門的な知識の習得に時間を要してしまう
- 会計ソフトを導入するなどのコストが掛かってしまう
- 自計化しているにも拘らず、会計事務所の顧問料の削減やサービス向上に繋がらないことがある
このように、「自計化」にはデメリットもあるものの、それを遥かに上回るメリットがあり、健全で持続的な成長を目指す中小企業には是非「自計化」を導入していただきたいと思っております。
「自計化」に当たっての不安や問題 ~これらに対する考え方~
Q1 そうは言っても、自社の経理負担が増えるのはちょっと。。そもそも時間が無いんです。
A1 多少の負担増はやむを得ませんが、今は、銀行口座等の入出金データの取り込みや自動仕訳の機能も充実しており、実はそれほど大変ではありません。それより、そもそも「経理」は健全に経営するための必要不可欠な会社の機能です。ここに経営資源をちゃんと充てませんか?
Q2 記帳できるほどの専門知識も無いし。。簿記なんてやったことありません。
A2 全く心配ありません。殆どの会計処理はパターン化されており、通常の取引であれば迷うことはありません。また、当事務所の手厚いサポートがずっと継続します。
Q3 会計ソフトの導入コストも掛かるんですよね?
A3 多少のコストは掛かりますが少額です。健全経営のための「必要コスト」とご理解いただければ幸いです。
Q4 会計事務所の顧問料の削減やサービス向上に繋がらない場合もあるのですか?
A4 一般的にはこうした懸念はありますが、その点はお任せください。当事務所では、お客様による「自計化」を前提に、会社にとって役に立つ税理士として、黒字経営に向けた伴走サポートをご提供しております。お客様企業の健全で持続的な成長を願い、「自計化」のご提案をさせていただいており、決して、お客様の期待を裏切ることはありません。
「自計化」で会社を強くする!
Q5 「自計化」を勧めるのは、税理士が面倒な仕事をしたくないだけではないのですか?
A5 いいえ、違います。当事務所は、お客様企業の成長・発展には「自計化」が絶対必要であると考え、ご提案させていただいております。
正直申し上げて、
- 「記帳代行」を外部に依頼している会社で成長している会社はありません。
- 「記帳代行」が会社をダメにしているとも言われています。
社長が常に数字と向き合い、真の意味での「経営」を実行する体制が望まれます。
モットーは、「自計化」で会社を強くする!
Q6 そうは言っても、うちの会社で本当に「自計化」できるか不安です。
A6 いきなりは難しいと思いますので、始められる部分から、半年~1年くらい掛けて、少しずつ進めて行きませんか? 当事務所がしっかりとサポートさせていただきますのでご安心ください。
このように、当事務所では、お客様企業が健全で自律的な経営を行っていけるよう、「自計化」を推奨し、その導入のサポートを行っております。
これまで別の会計事務所に記帳代行を依頼していたお客様が、当事務所への会計事務所変更を機に「自計化」に移行し、「やって良かった」とおっしゃる社長さんがとても増えています。以下は「自計化」に取り組んだ企業様の社長さんたちの声です。
- 「一気に経営が見えるようになった。」
- 「これまで財務はよく分からずモヤモヤしていたが一気に晴れた。」
- 「先の見通しを立てやすくなった。」
- 「経営が面白くなった。」
- 「これまで会計事務所に記帳してもらいそれで終わりだったが、今は、会計事務所から様々なアドバイスを頂ける。会計事務所に対する見方が変わった。」
皆様も是非、「自計化」で経営を進化させてみませんか?
こちらの動画もご覧ください!