法人が中古の建物を取得した場合、建物の築年数に応じて、中古資産の耐用年数を算定することがあります。

例えば、法定耐用年数や経過年数から計算した結果、中古建物の耐用年数が7年となれば、通常は、その建物を7年間で減価償却していくことになります。

それでは、中古建物の取得後に大規模なリフォーム工事を行った場合、そのリフォーム費用についても、建物本体と同じ7年で減価償却してよいのでしょうか。

結論から申し上げると、必ずしも7年で償却できるとは限りません。

リフォーム工事の金額が大きい場合には、中古資産について計算した簡便法による耐用年数を使用できなくなり、建物本体を含めて耐用年数を見直さなければならないことがあります。

また、一口にリフォーム工事といっても、その内容は建物本体、建物附属設備、構築物、器具備品などに分かれる可能性があります。工事内容を適切に区分することは、正しい減価償却計算を行うためだけでなく、減価償却費を計上する時期にも影響します。

今回は、中古建物を取得してリフォームした場合の耐用年数について、リフォーム費用の内容や金額、工事を行った時期ごとに整理して解説します。

目次

  1. 中古資産の耐用年数の基本
  2. リフォーム費用はすべて「建物」になるわけではない
  3. 事業供用前のリフォームは金額によって取扱いが変わる
  4. リフォーム費用が建物の取得価額の50%以下の場合
  5. リフォーム費用が建物の取得価額の50%を超える場合
  6. 加重計算による耐用年数算定の設例
  7. 事業供用後にリフォームした場合
  8. 実務上確認しておきたいポイント
  9. まとめ

 

1. 中古資産の耐用年数の基本

中古資産を取得した場合、税務上の耐用年数は、原則として、その資産を事業の用に供した後に使用できると見込まれる期間によります。これを一般に「見積法」といいます。

ただし、取得した中古建物があと何年間使用できるのかを合理的に見積もるには、建物の構造、劣化状況、修繕履歴などを調査しなければなりません。専門家による調査が必要になることもあり、実務上は正確な見積りが困難なケースが少なくありません。

そこで、使用可能期間の見積りが困難な場合には、次の「簡便法」によって耐用年数を計算することが認められています。

法定耐用年数の全部を経過している場合

法定耐用年数×20%

法定耐用年数の一部を経過している場合

(法定耐用年数-経過年数)+ 経過年数×20%

計算結果に1年未満の端数が生じた場合には、その端数を切り捨てます。また、計算結果が2年未満となる場合には、耐用年数は2年とされます。

例えば、法定耐用年数22年の建物を、築18年で取得した場合には、次のように計算します。

(22年-18年)+18年×20%
=4年+3.6年
=7.6年

1年未満の端数を切り捨てるため、簡便法による耐用年数は7年となります。

なお、中古資産の耐用年数の算定は、原則として、その中古資産を事業の用に供した事業年度に行う必要があります。その事業年度に中古耐用年数を算定しなかった場合、後の事業年度になってから簡便法に変更することはできません。

 


 

2. リフォーム費用はすべて「建物」になるわけではない

中古建物のリフォームを行った場合、施工業者からは「内装工事一式」「改修工事一式」などとして請求されることがあります。

しかし、税務上は、工事代金の全額を一括して「建物」に計上すればよいとは限りません。

工事の内容によって、例えば次のように資産区分が分かれる可能性があります。

工事内容 主な資産区分の例
固定された壁、床、天井、建具など 建物
電気設備、照明設備、給排水設備、衛生設備 建物附属設備
空調設備、換気設備 建物附属設備または器具備品
可動式の間仕切り 建物附属設備または器具備品
机、椅子、書棚、収納家具 器具備品
駐車場舗装、フェンス、門扉など 構築物
通常の維持管理や原状回復に当たる部分 修繕費となる可能性

 

建物附属設備、構築物、器具備品などは、原則として建物本体とは区分し、それぞれの資産に対応する法定耐用年数を適用します。

例えば、建物本体の法定耐用年数が長い場合でも、空調設備や電気設備、器具備品などは、それより短い耐用年数で償却できることがあります。

そのため、工事代金を内容に応じて適切に区分することにより、工事費の全額を建物として処理する場合と比べて、減価償却費をより早期に計上できる可能性があります。

減価償却費の計上が早まれば、工事直後の事業年度における法人税等の負担を抑え、資金を手元に残しやすくできることがあります。

ただし、これは減価償却費の計上時期が早まることによる課税の繰延べ効果であり、必ずしも長期的な税負担総額が減少するという意味ではありません。

また、工事費を実態に反して恣意的に短い耐用年数の資産へ振り分けることは認められません。工事見積書、請求書、設計図面、設備の機能、建物への固定状況などに基づき、実態に即して合理的に区分する必要があります。

修繕費に該当する部分

リフォーム工事のうち、固定資産の通常の維持管理や原状回復のために支出した部分は、修繕費として、原則として支出した事業年度の損金に算入できる可能性があります。

一方で、建物の価値を高めるもの、使用可能期間を延長させるもの、新たな機能を付加するものなどは、原則として資本的支出となり、固定資産に計上して減価償却を行います。

中古建物を取得し、自社の事務所、店舗、工場などとして使用できる状態にするために行う大規模な改装工事は、単なる原状回復ではなく、用途変更や価値向上のための支出として、資本的支出に該当することが多いと考えられます。修繕費か資本的支出かは、「修理費」「改修費」「リフォーム代」といった請求書上の名称ではなく、工事の実質的な内容によって判定します。

なお、後述する中古建物の取得価額や再取得価額との50%判定についても、リフォーム工事の総額をそのまま使用するとは限りません。まず、修繕費に該当する部分を除外し、さらに、建物附属設備、構築物、器具備品などを区分したうえで、原則として「建物に係る資本的支出額」を基礎として判定することになります。

 


 

3. 事業供用前のリフォームは金額によって取扱いが変わる

中古建物を購入した後、その建物をまだ事業に使用していない段階でリフォームを行い、工事完成後に初めて事務所や店舗として使用するケースがあります。

このような「事業供用前のリフォーム」については、建物に係る資本的支出の金額によって、中古資産の簡便法を使用できるかどうかが変わります。

基本的な判定は、次のとおりです。

建物に係る資本的支出額 耐用年数の取扱い
中古建物の取得価額の50%以下 簡便法による中古耐用年数を使用できる
取得価額の50%超、再取得価額の50%以下 通常の簡便法は使用不可。合理的な見積りまたは加重計算を検討
再取得価額の50%超 原則として法定耐用年数を適用

 

ここでいう「取得価額」は、土地を含めた不動産全体の購入代金ではなく、中古建物に対応する取得価額です。

また、「再取得価額」とは、その中古建物と同等のものを、新品の状態で取得すると仮定した場合の取得価額をいいます。

中古建物の時価や実際の購入価格とは異なる点に注意が必要です。

 


 

4. リフォーム費用が建物の取得価額の50%以下の場合

取得した中古建物を事業の用に供するために行った建物に係る資本的支出の金額が、中古建物の取得価額の50%以下であれば、簡便法による中古耐用年数を使用することができます。

例えば、次のようなケースです。

  • 中古建物の取得価額:3,000万円
  • 建物に係る資本的支出額:1,200万円
  • 簡便法による中古耐用年数:7年

中古建物の取得価額3,000万円の50%は、1,500万円です。

資本的支出額1,200万円≦取得価額の50%である1,500万円

この場合、簡便法による7年を使用できます。

したがって、この例で1,200万円の工事がすべて建物に係る資本的支出に該当するのであれば、建物本体と資本的支出部分について、どちらも7年を基礎として減価償却を行うことになります。

ただし、工事費の中に建物附属設備、器具備品、構築物などが含まれている場合には、それらを建物から区分し、それぞれに対応する耐用年数を適用します。

 


 

5. リフォーム費用が建物の取得価額の50%を超える場合

建物に係る資本的支出額が、中古建物の取得価額の50%を超える場合には、簡便法による中古耐用年数をそのまま使用することはできません。

例えば、中古建物について簡便法による耐用年数を7年と計算していたとしても、大規模なリフォームを行った結果、建物に係る資本的支出額が建物取得価額の50%を超えれば、その7年をそのまま適用することはできなくなります。

この場合、まずは、リフォーム後の建物について、今後の使用可能期間を合理的に見積もることになります。

もっとも、合理的な見積りが困難である場合には、資本的支出額と再取得価額との関係によって、次のように取り扱います。

資本的支出額が再取得価額の50%以下の場合

資本的支出額が中古建物の取得価額の50%を超えていても、再取得価額の50%以下である場合には、次の加重計算による耐用年数を使用することが認められています。

加重計算の算式

耐用年数
=(中古建物の取得価額+資本的支出額)
÷{中古建物の取得価額÷簡便法による耐用年数
+資本的支出額÷法定耐用年数}

この算式は、簡単にいえば、中古建物の取得価額部分は短い中古耐用年数、リフォーム工事部分は新品の法定耐用年数によってそれぞれ計算し、その二つを取得価額に応じて加重平均する考え方です。

計算によって算出した年数に1年未満の端数がある場合には、その端数を切り捨てます。

 

資本的支出額が再取得価額の50%を超える場合

資本的支出額が再取得価額の50%を超える場合には、中古資産についての見積法や簡便法によらず、原則として、その資産の構造や用途に応じた法定耐用年数を適用します。

これは、大規模な改修によって資産の状態が大幅に更新され、中古資産として短い耐用年数を適用することが適当ではなくなったためと考えられます。

なお、リフォーム費用が中古建物の購入価格を上回ったからといって、直ちに法定耐用年数になるわけではありません。

中古建物の取得価額と再取得価額は異なるため、次の二段階で判定する必要があります。

  1. 建物に係る資本的支出額が、中古建物の取得価額の50%を超えているか
  2. 建物に係る資本的支出額が、再取得価額の50%を超えているか

取得価額の50%を超えていても、再取得価額の50%以下であれば、加重計算による耐用年数を使用できる可能性があります。

 


 

6. 加重計算による耐用年数算定の設例

次のケースを例に、耐用年数を計算してみます。

前提条件

項目 金額・年数
建物の法定耐用年数 22年
取得時の経過年数 18年
中古建物の取得価額 3,000万円
建物に係る資本的支出額 4,000万円
建物の再取得価額 1億円

①簡便法による耐用年数

法定耐用年数22年のうち18年を経過しているため、簡便法による耐用年数は次のとおりです。

(22年-18年)+18年×20%
=4年+3.6年
=7.6年

1年未満の端数を切り捨てるため、簡便法による耐用年数は7年となります。

②取得価額の50%判定

中古建物の取得価額3,000万円の50%は、1,500万円です。

資本的支出額4,000万円>1,500万円

資本的支出額が取得価額の50%を超えているため、簡便法による7年をそのまま使用することはできません。

③再取得価額の50%判定

再取得価額1億円の50%は、5,000万円です。

資本的支出額4,000万円≦5,000万円

資本的支出額は再取得価額の50%以下であるため、加重計算による耐用年数を使用できます。

④加重計算

先ほどの算式に数字を当てはめます。

(3,000万円+4,000万円)
÷{3,000万円÷7年+4,000万円÷22年}
=7,000万円÷約610.4万円
=約11.46年

1年未満の端数を切り捨てるため、この中古建物に適用する耐用年数は11年となります。

したがって、このケースでは、中古建物について当初計算した7年ではなく、建物本体と建物に係る資本的支出について、加重計算による11年を基礎として減価償却を行うことになります。

 


 

7. 事業供用後にリフォームした場合

ここまで説明した取得価額の50%判定は、主に、中古建物を取得してから最初に事業の用に供するまでの間に行った資本的支出に関する取扱いです。

一方、建物をいったん事務所や店舗として使用開始した後、数年が経過してからリフォームを行う場合は、取扱いが異なります。

事業供用後の通常の資本的支出については、その資本的支出額を取得価額とする追加の減価償却資産を取得したものとして、既存の建物に現に適用している耐用年数を使用します。

例えば、中古建物に7年の耐用年数を適用している途中で、建物に係る資本的支出を行った場合には、その資本的支出部分についても、原則として7年で償却します。

この場合、建物本体の残りの償却期間を使用するのではありません。

例えば、建物本体を7年で償却しており、既に4年が経過していたとしても、追加の資本的支出を残り3年で償却するのではなく、その資本的支出部分について、工事後に新たに7年の耐用年数を適用します。

ただし、中古資産に対して、一つの計画に基づく資本的支出額またはその事業年度中の資本的支出額の合計額が、建物の再取得価額の50%を超えるような大規模改修を行った場合には、例外的に、建物本体と資本的支出について法定耐用年数による見直しが必要になることがあります。

 


 

8. 実務上確認しておきたいポイント

中古建物の取得とリフォームが同時期に行われる場合には、次の順序で確認するとよいでしょう。

①土地と建物の取得価額を区分する

不動産の売買代金が土地と建物の総額で表示されている場合には、まず土地と建物の取得価額を合理的に区分します。

50%判定で使用するのは、土地を含めた総額ではなく、中古建物の取得価額です。

②工事明細を入手する

「改修工事一式」という請求書だけでは、適切な資産区分や耐用年数の判定が困難です。

施工業者から、工事項目別の見積書、請求明細書、設計図面などを入手しておく必要があります。

契約や工事が完了した後に細かな内訳を求めても、施工業者側で明細を作成できないことがあります。可能であれば、工事の発注段階から、資産区分が分かる見積書の作成を依頼しておくことが望ましいでしょう。

③修繕費に該当する部分を確認する

通常の維持管理や原状回復部分は、修繕費として処理できる可能性があります。

一方で、価値向上、耐久性向上、用途変更、新たな機能の追加などに対応する部分は、原則として固定資産に計上します。

工事全体を一括して判断せず、工事項目ごとに内容を確認することが重要です。

④資産の種類ごとに区分する

建物、建物附属設備、構築物、器具備品などに区分します。

建物附属設備や器具備品に該当する工事費は、建物本体より短い耐用年数で償却できることもあります。

適切な区分は、正確な申告だけでなく、減価償却費の計上時期や資金繰りにも影響します。

⑤事業供用前か供用後かを確認する

同じリフォーム工事でも、中古建物を最初に事業の用に供する前に行ったのか、既に使用を開始した後に行ったのかによって、耐用年数の判定方法が異なります。

工事完成日だけでなく、実際の使用開始日についても資料を残しておくことが重要です。

⑥二つの50%基準を混同しない

事業供用前の資本的支出については、次の二段階で判定します。

  1. 中古建物の取得価額の50%を超えているか
  2. 建物の再取得価額の50%を超えているか

「リフォーム費用が中古建物の購入価格を超えた」という理由だけで、直ちに法定耐用年数になるわけではありません。

取得価額の50%を超えていても、再取得価額の50%以下であれば、加重計算を使用できる可能性があります。

⑦再取得価額の根拠を残す

再取得価額は、中古建物の購入価格ではなく、同等の建物を新品で取得する場合の価額です。

金額が大きい場合には、建築時の工事費、現在の建築単価、建築会社や設計会社による見積書など、計算根拠となる資料を保存しておく必要があります。

 


 

9. まとめ

中古建物を取得してリフォームした場合、リフォーム費用を建物本体と同じ中古耐用年数で償却できるかどうかは、工事内容や金額、工事を行った時期によって異なります。

特に、中古建物を事業の用に供する前に大規模なリフォームを行った場合には、次の点に注意が必要です。

  • リフォーム工事の全額を一律に建物として処理しない
  • 修繕費に該当する部分がないか確認する
  • 建物、建物附属設備、器具備品、構築物などに区分する
  • 建物に係る資本的支出額と中古建物の取得価額を比較する
  • 資本的支出額が取得価額の50%を超える場合には、通常の簡便法は使用できない
  • 再取得価額の50%以下であれば、加重計算を使用できる可能性がある
  • 再取得価額の50%を超える場合には、原則として法定耐用年数を適用する
  • 事業供用後の通常の資本的支出は、建物に現に適用している耐用年数で償却する

中古建物について簡便法による耐用年数が7年と計算されていたとしても、リフォーム費用が高額であれば、その7年を建物本体とリフォーム部分にそのまま適用できない可能性があります。

また、リフォーム工事を適切に資産区分することにより、建物本体より短い耐用年数を適用でき、減価償却費を早期に計上できることがあります。

もっとも、資産区分は工事の実態に基づいて判断する必要があり、工事費の金額だけで機械的に処理することはできません。

大規模なリフォームを伴う中古建物の取得では、工事費の総額だけを見るのではなく、工事明細を資産の種類ごとに整理したうえで、中古建物の取得価額および再取得価額との関係を確認することが重要です。